『時・処・位』を的確に捉え、持っている知識や経験、情報を正しく活用できる人。

 

特に二人一組で自発的に稽古を行うことで、『 いま自分が何をしなくてはいけないかを判断して行動すること。』を、幼い時から学ぶことになり、 自分が置かれたその場の空気を読んで、持っている知識、技能を正しく活用できる大人になっていきます。 緑帯になる頃(およそ入門して1年後)には、自発的に稽古に取り組める状態になるように仕向けていきます。
しかし、この「時、処、位」は、稽古だけで身に付くものではありません。これまでの経験から、家族に認められ、自分の存在感、責任感を知り、 忍耐力と自発性も養う事になる『お手伝い』が重要な役割を持っていると感じます。

 

時・処・位ができていないのは子供たちだけではありません。我々大人も五感と第六感をしっかり働かせ空気を読める観察力と洞察力を身に着けることが必要です。

 

五感の一つである「みる」という行為は情報入手の重要な手段であり、さまざまな見方が存在します。

 

見る 目で対象の存在/形状などを確かめること。
観る 鑑賞する。 評価する。
診る 病状を調べる。 患者の病状を診断する。
視る じっと見る。
看る 人の看護をする。
覧  見渡す。よく見る。
睹  じっと見つめる。
瞰  見下ろす。のぞむ。 遠くを見渡す。
瞻  あおぎ見る。目(め)を遣る(やる)。
まだまだありますがこれらはすべて「みる」事です。

 

また、「みる、という動作」に対しても沢山の表現が有ります。
にらむ、鑑賞する、見物する、視聴する、視野に入れる、視界に入る、展望する、観覧する、目にとまる、注視する、刮目する、かぶりつく、監視する、看視する、環視する (大勢の人がまわりをとりまいて見ていること)、観察する、凝視する、目を凝らす、キョロキョロする、見物する、正視する、着目する、直視する、目をやる、目撃する。

 

どのように物を見たかで、そのあとの行動が変わってきます。
物事(事象)を見る時には次のことに心掛けるよ良いと言われています。
1.見えるところを見る。(表面を見る、拡大してみる、全体を見る。)
2.見えないところを見る。(覗いてみる、透かして見る、分解して見る。長期的な視点で見る。)
3.比較してみる。(上手な人と、良いものと、先輩と、良品と、外観を、引っ張り具合/圧縮/曲げなどの感触/強度、など)
4.測ってみる。(長さ、重さ、機能、など)
5.先入観を持ってみない。
6.発想を書きとめる。(頭の中の整理と後でわからなくならないために書いておく。)

 

少林寺拳法では拳技を行うときに広く全体を見る事(八方目=はっぽうもく)を重要視します。
八方目とは攻者と相対した時に
1.前方の150度〜160度の範囲を視野に入れる。(視界の中で何か動くと気が付くレベル)
2.相手の体を全体的に見ながら、足、腰、肩、に注意を払う。
3.相手の目、口、胸辺りの狭い範囲を見て気配を察知する。
4.360度、聴覚、臭覚、触覚、第六感、で気配に注力する。

 

人の視野とは意外に広いものですが、見ようと言う意識をしていないと視線は一ヶ所に集中してしまいます。 常に訓練をしていなければ全体を見る目を持っていながら、一点しか見ない様になってしまうのです。

 

これは、単に映像の世界だけでなく、生活の中で遭遇する様々な事象に対する見方、受け取り方、にも同様のことが言えます。
人は、自分に興味のあること、自分の利益、に意識が集中してしまい、自分を取り巻いている全体を、見わたす事が出来なくなってしまいます。

 

生活の中でも八方目を意識し、あらゆるところに目を向け、物事の本質を見極め、狭い視野、一方的な物の見方から脱却し、 自分が置かれたその場の空気を読み、持っている知識、技能を正しく活用し、総合的に判断できる様になりたいものです。

 

topへ戻る